2022年5月 近い未来の電池

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もはやファンタジーの扱いになってしまった海外出張。私の社内での仕事の内容が変わったこともあり出張がボチボチ再開されました。出張に向かう成田エクスプレス内で督促を受けても中々出せていない2年ぶりのブログを書いております。

新しい仕事は最近新聞や雑誌などでよく見かける「全固体電池」という皆様がおそらく分かっていそうで、なかなか分からない製品の事業開発の仕事です。電池は吉野先生のノーベル賞受賞が象徴するように、これまで日本が世界をリードしてきた分野ですが、ヨーロッパやアメリカではコロナ後に大量の資金が流れ込んで、世界中(特にアジア)から人材がそれに吸い寄せられるようにあつまるとてもホットな状況であることを4月に参加した社内の各大陸担当が集まる会議で思い知らされました。数多のまだなんの製品も作っていない、研究者だけの会社に数百億円、数千億円が集まってしまう状況に、「うむ・・・良くわからないけどこれは何か起こりそうだな」と。

残念ながらド文系の私には要領よくそれがどういうものなのか説明できる能力は“まだ”持ち合わせていませんが、これまで数十年余りブレークスルーできなかった技術的な壁をこういう世の中の状況が超えさせてしまうのかな、と自身の仕事を肯定する意味でも考えています。一方で長年にわたって電池の盛り上がり、盛り下がりを経験し、その技術的な困難さを理解されている方々からすると、「そんなことはここ数年で起こりっこないよ」と言われてしまいそうなのもまた別の側面。ただ振り返ってみてかつての日本の半導体、液晶テレビ、太陽電池の盛者必衰を考えたときに、一抹の不安がいつも頭の隅に残ってしまうのも事実です。そんなことから長年の努力が正当な価値として認められるように日本の会社にも頑張ってほしい、と心から思えますし自分にもその一助が微力ながらできるのではないかと、「勝手な大義」を新しい仕事に感じています。

弊社は既存のリチウムイオン電池用途に炭酸リチウムや水酸化リチウムを多く供給しており、おそらく皆様のスマホやPC、蓄電池、EVにも入っているはずです。これが全固体電池になるとさらに多くのリチウム製品が使われることになります。充電時間が短くなる、一充電当たりのEVの航続距離が長くなる等々、皆様の生活へのメリットも多くあるこの技術に是非ご注目を!


※写真は弊社ノースカロライナ州キングスマウンテンにあるバッテリーマテリアルイノベーションセンター。この広大な敷地内では昨今のEVブームを受けて数十年ぶりにリチウム鉱石の採掘が再開される予定です。

2022年5月 KS